公開日:2025.12.25 身近な湿度のおはなし

湿度への投資で会社が潤う?

職場環境の整備において、これまで「温度」や「換気」に比べて「湿度」は、残念ながら後回しにされがちな要素でした。しかし最近では、従業員のウェルビーイングや健康経営への関心の高まりとともに、湿度管理を含めた職場環境の改善を心がける企業が着実に増えてきています。
冬場の乾燥によって、感染症が蔓延しやすくなるだけでなく、「なんとなく乾燥している気がする」「夏場はジメジメして仕事が進まない」といった感覚的な不快感は、実は経営上のリスクにも直結します。今回は、事業主が負う労働安全衛生法上の義務を再確認しながら、なぜ今「湿度管理」を徹底することが企業にとって不可欠なのかをご紹介します。

職場の湿度管理は、単なるマナーや推奨事項ではありません。労働安全衛生法に基づき定められた「事務所衛生基準規則」において、具体的な基準が明確に規定されています。

この規則の第5条第3項では、空気調和設備(エアコンなど)を設けている職場に対し、以下の通り定められています。
「室の相対湿度は、四十パーセント以上七十パーセント以下に保つよう努めなければならない。」
この「40%以上70%以下」という基準は、湿度が高すぎても低すぎても労働者の健康に悪影響を及ぼすという科学的根拠に基づいています。
「努めなければならない(努力義務)」という表現ではありますが、従業員の安全と健康を守る「安全配慮義務」の観点から、この基準を一つの指標として環境を整えることは、いまや現代の企業に課せられた事実上の責務といえます。

法的基準が定める湿度の重要性を具体的な例を用いてご紹介します。
湿度が40%を下回ると、のどや鼻の粘膜のバリア機能が低下し、ウイルスの活動性が向上、「感染症リスクの増大」につながりかねません。これが前述した「集団欠勤による経営リスク」の引き金となります。
さらに、経営リスクは欠勤だけではありません。目や肌の乾燥による不快感は、集中力を著しく低下させ、「生産性の低下」を引き起こす可能性もあります。
また、静電気が発生しやすくなり、精密機器の故障原因となるほか、放電による不快感が従業員のストレスになります。
反対に、湿度が70%以上になると、汗が蒸発しにくくなり、体温調節が困難になります。室内であっても熱中症のリスクが深刻化します。また、カビ・ダニの発生しやすい環境は、アレルギーやシックハウス症候群の原因となり、長期的な健康被害を招く恐れがあります。

それでは、企業にとって必要な「湿度管理」の具体例をご紹介します。
まずは、状況把握を行います。各所に温湿度計を設置し、数値を「見える化」して定期的に記録します。相対湿度には、室温が大きく関係しますので、温度も同様に記録しておきましょう。
冬場、相対湿度40%を下回っていることが分かれば、加湿器の導入を検討しましょう。広いオフィスでは家庭用では能力が足りないことが多いため、大容量な業務用加湿器などで40%以上をキープします。
夏場は、除湿と換気を行いましょう。エアコンの除湿機能や除湿機をフル活用し、70%を超えないよう管理します。
思うように湿度コントロールができないときは、室内の空気を循環させることも検討しましょう。サーキュレーター等で温度・湿度のムラを解消し、部屋の隅々まで均一な環境を整えます。

湿度管理を単なる「コスト」と捉えるのは少しもったいないかもしれません。これは、「法令を遵守し、労働者の安全と健康を守るための義務」であると同時に、企業としてのリスクを遠ざけ、みんなのパフォーマンスを自然に引き出してくれる、非常に価値のある「投資」と言えます。
心地よく整えられた湿度は、従業員たちの元気な毎日を支え、オフィス全体を活気あるものに変えてくれるはずです。まずはオフィスの湿度をチェックすることから、会社とみんなの未来を潤す「湿度ケア」を始めてみませんか?
 

 

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