公開日:2025.09.29 身近な湿度のおはなし

多湿を好むウイルスもいる

一般的にウイルスや感染症が流行するのは冬だと考える方が多いと思いますが、夏にも職場や学校で体調不良の連鎖が続くことがありますよね。夏風邪やなんとなく続く不調には、夏の湿度が関係しているかもしれません。
今回は、夏のウイルス流行やだるさの原因にもなる、夏の湿度について見てみましょう。

夏に流行する主なウイルスとして、エンテロウイルスやアデノウイルスが挙げられます。
エンテロウイルスは、子供に多い手足口病やヘルパンギーナなどを引き起こします。このウイルスは、冬のインフルエンザウイルスなどとは異なり、高温多湿の環境でも非常に安定して活動できるのが特徴です。また、感染力が強く、感染者の便や水疱の内容物などに含まれて排出されます。湿気の多い夏場は、トイレやお風呂場、プールなど、水回りでの感染リスクも高まりやすく、徹底した衛生管理が求められます。
アデノウイルスは、主に咽頭結膜熱(プール熱)を引き起こします。アデノウイルスも、エンテロウイルスと同様に高湿度や塩素に対する抵抗力が強いため、プールの水を介して感染が広がりやすいことから「プール熱」と呼ばれます。

「ウイルスがまん延しやすくなるのは、空気が乾燥しているときではないの?」と思われるかもしれませんが、これらのウイルスは乾燥に強いという性質に加え、高温多湿の環境下でも不活化しにくいという厄介な特性を持っているため、夏場でも活発に流行するのです。冬だけでなく、夏も手洗い・うがいは非常に重要です。

さらに、エアコンによる湿度の低下で体調不良を引き起こす可能性もあります。外は高温多湿ですが、室内では長時間エアコンを使用するため、自分でも気づかないうちに、乾燥した環境に身を置いていることがあります。適正相対湿度とされる40%を切ると、鼻や喉の粘膜が乾燥し、ウイルスや細菌に対するバリア機能が低下します。過度な乾燥は、夏風邪をはじめとする感染症にかかりやすくなる大きな原因となります。

夏の体調不良のもう一つの原因は、自律神経の乱れです。酷暑の屋外と、乾燥して冷えすぎた室内との急激な温湿度差は、体温調節を担う自律神経のバランスを崩しやすくなります。
自律神経が乱れると、体温調節がうまくいかなくなり、夏のだるさや倦怠感、頭痛、肩こりといった夏バテに似た体調不良を引き起こします。さらに、エアコンによって体が冷やされ、皮膚や呼吸から水分が奪われるため、脱水症状のリスクも高まります。喉の渇きを感じていなくても、こまめな水分補給が重要です。

夏のウイルスや体調不良から身を守るには、温度だけではなく湿度にも着目した体調管理を心がけてみてください。
 

 

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