公開日:2025.08.13 身近な湿度のおはなし

湿度対策にスポットクーラーはあり?

記録的な猛暑と言われる近年の夏は、気温の高さに加え、高い湿度が加わることで、工場や作業場、農家、工事現場といった半屋外や開放された空間での、熱中症のリスクが劇的に高まっています。さらに、続く電気代高騰の波は、事業主や現場管理者の方々にとって頭の痛い問題ではないでしょうか。
この二重苦を乗り越え、従業員の安全と快適な作業環境を確保するには、どのような対策が有効なのでしょうか。注目すべきは、気温だけではなく、「湿度」です。

熱中症対策というと、まず気温に目が行きがちですが、実は湿度も体感温度に大きく影響します。例えば、同じ30℃の気温でも、相対湿度が50%と80%では、体感する暑さは全く異なります。湿度が上がると、私たちの体から汗が蒸発しにくくなります。汗が蒸発する際に体から熱を奪う「気化熱」という現象が起きにくくなるため、体が熱をうまく放出できず、どんどん熱がこもってしまうのです。

特に、作業着を着用して体を動かす現場では、より多くの汗をかくため、高湿度は文字通り「命にかかわる」問題となります。気象庁が発表している暑さ指数(WBGT)でも、気温だけでなく、湿度や日射も考慮されているのはこのためです。特に湿度は、指数の算出時にもっとも比重が大きく扱われています。詳しくは、「熱中症のアラートは湿度で決まる」の記事でご紹介しています。

さらに、半屋外の作業場では、湿度による危険性がさらに高まります。建物内部のように湿度をコントロールすることが難しく、外気の湿気の影響を直接受けるからです。特に、水を使用する工場や、熱源がある場所では、湿度と気温が相乗的に上昇し、非常に危険な環境になりがちです。

オフィスビルなどと異なり、工場や作業場、工事現場といった空間は、壁がなく開放されていたり、天井が高すぎたりするため、全体を冷やしたり除湿したりするのが非常に困難です。たとえ大型の業務用エアコンを設置しても、冷気や除湿された空気がすぐに逃げてしまい、電気代ばかりかかって効果が薄いという課題に直面しがちです。

そこで導入しやすいのは、必要な場所だけを効率的に冷やすスポットクーラーです。スポットクーラーは、エアコンのように空間全体を冷やすのではなく、特定の場所や人に向けて集中的に冷気を送ることができるため、以下の点で高湿度環境下の熱中症対策に貢献します。

1. 体感温度の改善
高温多湿の空気の中で、作業者の周囲に冷たく乾燥した空気を送ることで、体感温度を大きく下げることができます。冷たい空気に触れることで、汗の蒸発が促され、気化熱による冷却効果が高まります。
2.ピンポイントの冷却
作業ライン、機械の操作盤、休憩スペースなど、熱中症リスクが高い場所や作業者に対して、狙いを定めて冷却することが可能です。これにより、無駄な電力消費を抑えつつ、最も効果的に体温上昇を抑制できます。
3.設置と移動の手軽さ
大規模な設置工事が不要な機種が多く、移動も比較的容易なため、季節や作業内容、配置の変更にも柔軟に対応できます。

もちろん、スポットクーラーの冷気に触れることで体温が下がるだけでなく、人の周囲の空気を冷やすことで、体感的な湿度による不快感を和らげる効果が期待できます。
スポットクーラーは、冷気を出す際に空気中の水分を凝結させて排出するため、送風される空気は除湿された状態になります。これはエアコンが湿度を下げるのと同じ原理です。スポットクーラーの内部には冷たい熱交換器があり、空気がここを通過する際に温度が急激に下がり、水蒸気が結露して水滴になります。この乾燥した冷気を直接体に当てることで、汗がより効率的に蒸発し、涼しさを実感しやすくなるのです。これは、ただの扇風機とは一線を画す大きなメリットであり、高湿度環境下で特に威力を発揮します。

しかし、スポットクーラーを設置するだけでは、熱中症対策が万全だとは言えません。複合的なアプローチが重要です。
例えば、スポットクーラーの冷気を効率的に循環させたり、こもりがちな湿気を排出したりするために、大型の扇風機や送風機を併用しましょう。空気の滞留を防ぐことが重要です。また遮熱対策として、屋根や壁に遮熱シートを貼る、日よけを設置するなど、建物自体の温度上昇を抑える工夫も効果的です。そして何より、水分・塩分補給、こまめな休憩、体調管理などの基本的な対策の徹底は、どのような環境下でも欠かせません。

高まる電気代と厳しい猛暑・高湿度の環境下で、作業者の安全と生産性を守るためには、賢い空調設備の選択と、多角的な対策が不可欠です。スポットクーラーを上手に活用し、安全で快適な職場環境を築きましょう。
 

 

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